日銀は10月6-7日の会合で追加緩和を見送った。景気悪化とインフレ低迷の中、市場では追加緩和期待が根強いが、安倍政権の下で2%インフレ目標追及の優先度は低下しており、日銀は少なくとも年内は追加緩和を行わない可能性が高まっているようだ。
仮に景気後退となっても、金融政策ではなく財政政策(補正予算)で対応される可能性もある。追加緩和先送り継続は円高圧力となるか、ドル/円が足許のレンジを維持できるかは、米利上げ期待が維持されるかにかかっている。
高まる追加緩和期待・・・
このところ市場では日銀の追加緩和期待が高まっており、時期としては半期展望レポートで最新のGDP成長率やコアCPI見通しが提示される10月30日会合がメインシナリオながら、サプライズ演出のため今回10月6-7日の会合で決定されるとの見方もあった。
追加緩和の背景としては、①4-6月期のマイナス成長(前期比年率-1.2%)に続き、7-9月期もマイナス成長となるリスクが高まっていることに加え、②日銀が2%達成を目標としているコアCPI(除く生鮮食品)が8月に-0.1%へ低下し、今後も原油安の影響もあり目標達成が危ぶまれていること、などが挙げられてきた。
追加緩和手法として市場では、①現在年間80兆円としているマネタリーベース拡大ペースを100兆円程度へ拡大、②うちETFやJ-REITの買入れ額を約倍増(各々3兆円→6兆円程度、900億円→2,000億円程度)、③買入れ対象の長期国債の平均残存年限を現在の7~10年から10~12年前後へ延長、④超過準備に対する付利金利を現在の0.1%から0.05%へ引下げ、⑤付利金利のマイナス化、などの案が挙げられている。
・・・但し「おあずけ」状態が来年まで続くリスク
もっとも、日銀は今回、追加緩和を見送った。今回だけでなく、少なくとも10月中の追加緩和は見送られる可能性が高い。第一に、来週以降、重要イベントが相次いで予定されている。
特に11月16日の本邦7-9月期GDP発表が重要で、仮に10月中に追加緩和を行った場合、その後発表される7-9月期GDPが市場の懸念に反してプラス成長となり、二四半期連続マイナス成長という技術的景気後退には陥らずに済んだことが明らかになると、追加緩和を無駄に行ってしまったことになる。そうした事態は日銀としても避けたいだろう。
また、10月19日発表の中国GDP(従来とは違う方法で推計される予定)が大幅減速を示したり、10月あるいは12月の米FOMCでの利上げあるいは見送りを受けて円高株安となる場合、追加緩和の効果が短期間で帳消しとなってしまうリスクが大きい。
こうしたイベントリスクに限らず、足許は世界的に金融市場が不安定な状況が続いている中、9月後半に相次いだフォルクスワーゲンやグレンコアなどの個別企業の問題が突如浮上して市場が動揺するリスクもあり、政府・日銀としても極力追加緩和カードは温存したいはずだ。
<今後の主要イベント>
10月19日:中国7-9月期GDP発表
10月27-28日:米FOMC
10月29日:米7-9月期GDP発表
11月16日:本邦7-9月期GDP発表
12月15-16日:米FOMC
来年6-7月:参院選
17年4月:消費増税
次のページ>>「新三本の矢」で金融政策の位置付けが低下